人は非合理に行動する

経済学という学問があります。
経済学とは乱暴にまとめると、人々が幸せに暮らすために、限られた資源をどのように活用すればいいのかを研究する学問です。
ここでいう限られた資源とは、時間とお金のことです。
しかし幸せの概念は、個人の価値観によって異なります。
これでは学問は成立しません。

そこで、人はこういう原理で行動するであろうというモデルを作って、それを元に考えます。
これまでの経済学では、このモデルは合理的な考えによって、自分の利益になる行動をする存在であると定義されていました。

しかし、人はギャンブルをしたり無駄遣いをしたりと、非合理的な行動を取ることが多々あります。

そこで生まれたのが行動経済学です。
行動経済学では、人が経済的な行動を行うときには、論理的な思考ではなくメンタル面での要素がかなり大きく影響すると考えることから出発しています。

たとえば、大きな借金を抱えている人が、次の2つの選択肢をつきつけられた場合、どちらを選ぶでしょうか。
1つは、借金の半額を無条件でなかったことにし現在の負債総額がこれまでの半分に減る。
もう1つは、コインを投げて表が出たら借金は全額なしになるが、裏が出たら借金はそのままとなる。
多くの人は、後者を選ぶのではないでしょうか。

また、競馬場で朝から馬券を買い続けた人がずっと負け続けで最終レースまできたとき、その人はどのような馬券の買い方をするでしょうか?
本命を買って、少しでも損失を防ぐのがセオリーです。
しかし、多くのギャンブラーが大穴を狙って、これまでの損失をなかったことにしようと考えます。

このように人は損失が発生している場合は、リスクを受け入れやすい傾向があると考えるのが行動経済学なのです。
言い換えると、人は利益が生じたときの喜びに比べて、損失が生じたときの衝撃のほうが大きく感じるといえるのです。
このような考え方を、第1世代の行動経済学研究者であるダニエル・カーネマン氏は、プロスペクト理論と名付けました。

行動経済学をマーケティングに活かす手法とは?

このプロスペクト理論を、マーケティングに活用することができます。
それは、損失をアピールして購買意欲を高める方法です。

たとえば一般的な広告は、この基礎化粧品は透明感がありハリのある素肌へと導くので、驚くほど若々しい肌がキープできますというポジティブなメッセージを発信します。
しかし、行動経済学のプロスペクト理論を活用した広告では、この基礎化粧品を使わなければ肌がたるみ老化がどんどん進んでしまいますと、ネガティブなイメージを喚起させて、この商品を買わなければ老けるので損する!と思わせるのです。

また、返金保証も行動経済学を活用したものです。
行動経済学の心理的な効果に、保有効果と呼ばれるものがあります。
これは、一度与えられたものき自分のものなり、自分のものになってわずか数分しか経っていなくても、これを手放すと損をすると考えてしまう心理のことです。

この保有効果によって消費者は、一度購入した商品はよほどの不良品でない限り、商品を手放して返金してもらおうとは考えないのです。
ですから、一見して良心的な返金保証制度も、保有効果によって販売会社は損をしない仕組みになっているのです。

このように行動経済学は経済学の数学的な考え方に、心理学の考え方を取り入れたものです。
このほかにも、行動経済学を応用したマーケティング手法は、いろいろ考えられます。
行動経済学について、勉強してみてはいかがでしょうか。